理系塾講師のブログ

塾講師歴27年、理系全般、あらゆる学年を指導してきました。

医学部合格ケース①

個別指導で私立医学部を現役合格した生徒の話

 

都内の私立高校(女子御三家から少しランクが下がる女子高)の女子生徒

高校1年から数学のみ指導を始めた。

【高1】

定期テストレベルの数学で苦戦していたので、まずは定期試験で平均以上を目指すところから開始。授業では教科書内容の先取りと参考書「フォーカスゴールド」を使用し、先取り学習を進める。

宿題は「毎日例題5題、1週間に1回の授業でチェック」を指示、実行

【高2】

定期テストの点数も上がり上位の得点を取れるようになったため、「定期テストの勉強は自分で何とかする」ことにさせて、「フォーカスゴールド」に集中。その頃には教科書はひととおり終了しているので、問題集をひたすら反復、分からない部分を授業内で質問そして解説を繰り返す。

【高3】

過去問と相変わらず「フォーカスゴールド」の反復を継続。

 

最終的に私立医大を「特待生」で合格。

 

【その生徒の凄い所】

1日例題5題を「毎日」学習することは、簡単そうに見えても結構大変だが、

その生徒は最終的には1日例題10題を解くまでに加速していた。びっくりエピソードとしては、「宿題用のノートが1週間で1冊終わってしまう」ほど問題を解きまくっていた。医学部志望生の「1日10時間程度勉強する」ことを本当に継続してできていたのではないだろうか。

あと、英語に関しては他塾に通っていて相当成績は良かった様子。

 

苦手な数学を克服したケースであり、数学はまずは「教科書と網羅系の参考書1種類のみ」で医学部でも十分合格可能ではあるのだ。

医学部や国立大学への道

医学部合格、国立大学合格を目指そうとしたときにどう考えるか。

①国立大医学部

②私立大医学部

この目標設定であれば、理系に関して言えば例えば「東大、京大等の国立医学部以外の他学部」や「早慶(慶応医学部を除く)」に関しても学力的には十分だろう。

 

さて、子供の幼少期から塾講師目線で分岐点ごとに見ていくと

(1)就学前

子供にたくさん話かける。絵本の読み聞かせ。外に連れ出して五感を刺激する活動。運動。子供に関われば関わるほど良いが、義務感を抱いて親が強制的になると逆効果。子供の集中力は全然続かないのが基本。ストレスを溜めないように。

 

(2)小学校受験

実はあまりお勧めでない。親の経済力で決まってしまうから。試験も普通の学力試験とはかけ離れている。「勉強によって本人の実力で合格」とは言えない。

 

(3)中学受験

このタイミングでいわゆる名門私立中に合格させることができれば、中高一貫教育で医学部合格にかなり近づける印象。中学受験専門の塾に入れ、しかも上位の成績でないと厳しい。親の経済力が必要になってしまう。また、中学受験専門塾は存在する地域も限られてしまうため、地域によっては塾通いが難しい。

中堅どころの中学に落ち着いたとしても、つらい中学受験を乗り切ったこと、その過程で身に着けた学力は貴重なので、中学受験はできるならやる意味はある。

算数に関して言えば、子供がついてこれるなら、「受験算数」を学ばせておくと思考力がアップして、その後の学習に良い影響が出る。

 

(3)高校受験

都道府県によって、トップの高校が私立であったり、公立であったりするが、トップレベルの高校にまずは合格すること。トップレベルでないと、良い学習環境が得られないことが多く、「周囲の環境に逆らって自分だけ勉強」という強い意志で頑張ることを余儀なくされるため。

 

(4)大学受験

上記のそれぞれの時期に、どうするか決断して方向を決めていく訳だが、高校生になってから目指そうとすると物理的な時間が足りなくなることがよくある。

できるなら早めに手を打っておけば、選択肢もあり、軌道修正を何度もできるのでいいが、そうでなかったら、受験日から逆算して計画を立てて、自分だけのカリキュラムをつくり、計画通りに実行することが必要になる。

 

「教材選択、計画、実行」が適切であれば、いわゆる「逆転合格」的なことも可能だが、実際に経験した(経験させた)人の話を聞かないと難しい。

 

次回は、実際に医学部合格させたケースを述べてみたい。

中学受験の理科は難しい

中学受験の理科は実はとても難しいが、実は皆さんそれをあまり分かっていないことが多い。実際に生徒を指導、中学受験から大学受験の理系全般を指導可能な講師の視点から解説してみたい。

 

【内容について】

物理、化学、生物の内容を全て含む。「中学で学習する理科の方が小学生の理科よりも当然難しくなるだろう」という誰でも考えそうなことが、受験に関しては全くあてはまらない。むしろ逆である。高校受験の理科の方が簡単である。

中学の理科は悪く言えば「ただの暗記」で済む部分が大半で、ただの記憶力勝負であることが多い。知識さえ蓄積すれば受験でも乗り切れるのだ。

一方、中学受験の理科は、高校レベルの物理、化学、生物を解くかのような、理屈の理解や思考力を必要とする場合が多い。一つ例を挙げると、物理分野では「モーメント」の理解が必要だったりする。また、受験算数の知識を絡めた計算を化学計算でさせたりもする(つるかめ算とか)。

それを小学生が解くのだから、難度はさらに上がってしまう印象だ。

 

【講師側の裏事情】

中学受験の理系講師には、「中学受験で名門私立中出身だが、大学は文系」の講師が結構存在する。純粋な理系ではない講師が算数や理科を教えていることがよくある。

算数は「受験算数」のいわゆる「特殊算」があり、それを攻略するためのノウハウがかなり整備されているので、「ベテラン講師の良い授業をパクる」ことで、知識を短期間で身につけた上で、「自分の授業で繰り返し再現」し続けることで、自分のものになり、「わかりやすい授業」を行えるようになる。

また、教材についても、中学受験大手塾のテキストやプリントを見れば、よく練られていることが分かる。

 

それが理科になると、「そもそも良いテキストが存在しない」状態で、「過去問から良問をピックアップして問題集にする」方法が最適ということになってしまう。

(大手塾が実施している「模試」を参考にするという方法もあるが。)

すると、「大学受験の物理、化学、生物まで分かっている講師」が「きちんと問題選定」し、しかもそれを「きちんと解説できる」状態でないと、中学受験の理科で生徒の実力を向上させることは難しいと思われる。

 

高校の理科を理解していない文系出身の先生は、実はきちんと理屈が理解できていないことが多いので(または理系でも物理や化学が分かっていない講師も同じ)、理科を教わるときには注意が必要だ

生徒にとっても、講師にとっても、中学受験の理科は難しいのである。

数学はセンス?

数学にはセンスが必要と思っている人がいるが、受験数学についてはどうなんだろうか。

「平面幾何」を例に話をしてみたい。

自分で問題が解けないとき「センスがないから解けない」と言い訳をしたりする。

だが、平面幾何については他の単元とは違うアプローチをする。

①問題を解いた人の解き方を知り、暗記する

②図形を見たときに、その図の特徴から暗記しているどの解法を使うかを決める

③それを再現する(作業として)

見た目の特徴に反応して、身に着けた解法を思い出して再現することを繰り返すことで問題が解けるようになっていく。一例を示すと、

二等辺三角形見たら垂線を引く

・円に接線があったら「接点半径」を引く(90度の印も忘れず書く)

・直角三角形を見たら、まず相似を考え、次に三平方の定理を考える

等。

図形の特徴から条件反射的に作業をする。作業をやりきったら、そこで初めて「考える」作業が始まる。これを繰り返し修行のように行っていくと幾何は得意になるはずだ。

 

受験の数学とは論理的思考を見たいわけだから、センスや閃きで解くような問題とは真逆のはずだ。だから、訓練を積めば、平面幾何こそ「理屈で解ける」単元になる。

センスを排除して臨むものである。

高校受験数学で重要な単元②

受験を縦断する形でつながりのある部分を述べてみたい。

 

そのつながりはほんの一部かもしれないが、目立つところを言うと、

【相似】

これは中学受験の算数で行う内容がかなり難しいため、高校受験で使う知識とほぼ同レベルと考えていいだろう。つまり、受験算数で一定の実力がつけば、高校受験の図形の相似(もちろん三平方の定理が絡むような相似の問題は小学生では解けないが)の問題は苦労せずに解くことが可能。

 

私は、

・先取り学習は肯定

・集団授業はどちらかというと否定、個別指導は肯定

 

生徒の学力を最大限に伸ばそうと考えた場合、この方法になると思っている。

 

・すぐに理解できて問題を解けるようになる部分には時間を割かずに圧縮し、理解に時間がかかったり、仕上げるのに時間が必要なところに時間を充てる。

・上記の方法が上手くいき、先に進んでも問題ない生徒の場合、どんどん先取りを始める。

 

中学受験算数の直線図形を訓練しておくと、高校受験の相似の貯金になる。

中学受験の算数を知らずに中学生になっている場合はいちから積み上げだが、適切な方法で学べば、図形が苦手な生徒が多い中で、大きなアドバンテージが取れるのではないだろうか。

高校受験数学で重要な単元①

受験に向けて中学生が数学を勉強する際に、重要な単元の概略を述べてみたい。

 

【1】計算

正負の数、文字式、1次方程式

連立方程式、不等式

展開、因数分解2次方程式

他の単元の計算の「道具」として、「正確に、短時間でできるかどうか」を基準に基礎から標準的なレベルの計算を全学年を通してチェックするとよい。

もちろん高校数学でも計算力の基礎となるので重要。

 

【2】関数

比例、反比例、1次関数、2次関数(←厳密には原点を通る放物線までしか扱わないので、教科書等には2次関数とは書いていない)

関数の「xの値を一つ決めるとyの値がただ一つ決まる」という重要な概念についてはあまり触れずに、放物線と直線の「図形問題」のような状況になっている。高校入試の入試問題は正に「関数ではなくもはや図形」問題になっている。

高校入試の受験数学の専用テクニックがこの単元には結構あるが、高校の数学でそのテクニックはほとんど使わない。

 

【3】平面幾何全般

円、相似、三平方の定理、空間図形(考えたり、作業したりするのは平面であるため、平面幾何にひとくくり)

高校受験数学の最重要単元のひとつ。「図形が苦手」という生徒は非常に多い。原因は発想やアプローチの仕方が他の単元と違うため。また、仕上がるのに時間もかかる。生徒にとっては面倒くさい単元。

高校数学では、平面幾何は重要な単元と言えず、代数の方が出来ると何とかなってしまうので、放置されがち。

直接的な効果は薄いが、平面幾何ができると他の単元の問題を考える際に「解法の見通しがよくなったり、複数の解法が見えたりする」などのメリットがあるらしい。

 

と、中学数学の受験に重要な単元は高校に行くと「すげー頑張ったのに重要じゃなくなる」単元である。先のことまで見通してしまうと「無駄だな」と思ってしまうかもしれないが、平面幾何が高校受験では最重要だろう。

人は現状維持を求めがち

人は基本、「変化」を嫌う。

生物学的には「ホメオスタシス」(恒常性)が生物には働くためだ。(高校の生物を学習すると出てくる)

簡単にまとめて言ってしまうと、海から発生した「動物」は陸に上がるときに海の環境をそのまま持っていかないと生きられない。細胞という生命の小さい単位でその海を「細胞膜」で包むことでそれを実現。しかも主成分が水なので、気温の変化には結構強い(温まりにくく、冷めにくい)。内なる環境がなるべく変化の無い一定の状況を保つことが、生物が生きていくためには重要なのだから、恒常性に基づく機能が発達していく。

 

「今のままでいたい」、変化が起こるとそれを「嫌う」、というのは感情だけれども、理系的にはその物理的なシステムが感情にも影響しているのだろうと思ってしまう。

 

ただ、少し嫌でも適度な変化をする努力をしないと、物事が好転せず、悪化していくことがよくある。現状維持にこだわると、

・成長しない。むしろじわじわ衰えていく。

・変化しようとしている者を攻撃する。

ので、人生的にはあまりよくはない。

 

「倒れないように自転車をこぎ続ける」という例えを聞いたことがあるが、人はこの状態が実は一番健全なのかもしれない。

放っておくと体が現状維持をしようとするのを、頭でそれに逆らって変化をしようとする。人とはアンバランスな生物だと思う。自分は意識して変化しようと、最近は努力している。